麹町界隈わがまち人物館

島崎藤村、泉鏡花、有島武郎、樋口一葉、内田百閨A津田梅子、与謝野晶子、滝廉太郎、三浦環、武者小路実篤、中村吉右衛門など、百数十人にのぼる著名人・文化人たちが、かつてこのまちに住んでいました。それらの人物を通して、私たちのまちとのかかわりや業績を紹介します。

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 一葉の終のすみかとなったのは、本郷区丸山福山町(明治二十七年五月?)である。前住地、下谷龍泉寺町で開いた荒物・駄菓子屋をたたんだ上での引っ越しだった。日記には、妹邦子の辛抱が足らず、一銭一厘のわずかな利益を求める商いに飽き……などと書いてある。だが一葉自身も、わずかな利益を求めて足掻くような商売はもうやめようと心を決めていた。加えて、これはわたしの想像だが、一葉が自分の余命を無意識のうちに感じ取っていたように思えてならない。自分が今、何をなすべきかが、切迫した時間感覚の中で、ぱっと見えたのではないだろうか。

 丸山福山町へ転居してからは、「大つごもり」「たけくらべ」「にごりえ」「十三夜」と、次々、傑作を書いた。この中で、丸山福山町をもっとも色濃く反映しているのが、銘酒屋を舞台にした「にごりえ」である。実際、一葉の隣家は「浦島」という銘酒屋だった。「浦島」は、その後、他所へ移転しているから、お隣さん同士だったのは、ほぼ一年にすぎない。その間、「浦島」に身を寄せていた小林愛という女がいて、この人が「にごりえ」のヒロイン、お力のモデルになったのではないかといわれている。日記を読むと、一葉は彼女から身の処し方を相談され、とても親身になっている。社会の下層で苦しむ女性たちに、一葉は親切以上の同情を寄せた。自分が苦労したから尚更だったろう。他人の苦しみを、我が事として理解する能力を一葉は持っていた。

 「たけくらべ」の完璧な仕上がりに比べると、「にごりえ」は、お力という一人の女の、崩壊する自我が扱われているせいで、ちょっとつつけば、全体ががらがらと崩れ落ちてしまうような、暗く異様な迫力に満ちている。一葉がお力に、お力が一葉に、乗り移って書いている感じがある。

樋口一葉

樋口一葉

樋口一葉の恋の通い路は、本郷から麹町へ。

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津田 梅子

5000円札の肖像

5000円札の顔は、樋口一葉に続き二代続けてこの地域ゆかりの人。

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